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図面について思うこと [Web、CG、スケッチ、デジタルモデリング、仕事]


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昨日の朝は朝一でミスミからのアンケート電話で起こされた。ミスミ時々使うし、電話の女性が恐縮しつつも丁寧な感じで、邪険にしてはいけない気がしたので、まだ寝ていたんだが…と思いつつ応対した。こういう電話をしてくるということはミスミも色々大変なんだろうな。

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ミスミにはサービス縮小とかにはなってほしくないし、応援する気持ちで結構まじめに眠い頭で答えたのだが、最初から私のことを機械設計担当者と決めつけていて、まぁそれも間違いではないんだけど、うちは私一人しかいない会社で、えーと、主に自動車のデザインをやってましてですね、その自動車のデザインに関連するものとして構造設計とか機構設計とかをやっているんです…というようなことを眠い頭で言ったのだが、どうも最後までよく理解してもらえてはいなかったような感じだった。うちみたいな会社あんまりないんだろうし、彼女も困っただろうな。
デザイナーがミスミやタキゲン、モノタロウなんかを知っててよく使うなんてことも、まぁあんまりないんだろうし。で、アンケートの後半、図面は月に何枚くらい描かれますか?と聞かれ、0枚ですと答えたら、ちょっと間があって、そ、そうでございますか。0枚ですね。って、そんな反応しなくても…。

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確かに時々図面が欲しいという要望はうちのお客様でもいらっしゃるが、少なくとも私はもう何年もまともな図面を描いていない。90年代の後半から3Dデータを扱うようになって、どんどん図面は描かなくなっていった。幅2メートル以上の自分専用ドラフターはモノを置いたり何かを貼り付けたり、ただ結構な場所をとるだけでもったいない使われ方をするようになった。実務はその横の机でもっぱらPCに向かって行うようになり、しばらくしてドラフターはどこかに引き取られていった。よっぽど買い取って自宅に持ち帰ろうかとも思ったが、よーく考えて、意味無いかもなと思ってやめた。自宅に大型のドラフターがあって、そこに1/4くらいのレイアウト図とか貼ってたらかっこいいかなぁと思ったし、今でもそれはちょっと思うのだが…w

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図面では全てを表現しきれない。対象が直方体や円柱、円錐等の比較的プリミティブな形状やその組み合わせであって、2~4面図等で形状を完全に表現できるのならそれでいいと思う。ただ、そうでない自由曲面などが含まれているものは3面図だろうが4面図だろうが、いくつもの断面やビューをとろうが、どうやっても完全には情報全てを伝えられない。それは感覚的にもわかると思う。

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今も製作現場では図面が必要なのはわかるし、図面で完全に形状が表現できるのならそれが効率もいいと思う。3Dで面張ってフィレットかけて…なんてしなくていいならそのほうが簡単でいいに決まっている。合理的だ。
製作現場で図面を見ながら板材を切り出し、穴あけや曲げ加工をして、時には1/1スケールの図面のコピーを材料に張り付けてゲージ代わりにするなんていう使い方もある。そういう現場では、手元にPC置いていちいち画面見て寸法をあたってなんてやってるとめんどくさくてしょうがない。溶接機のそばにPCなんて置きたくないし、溶接マスクや手袋外してマウスいじるのもメンドクサイ。そういう現場では図面がいい。有用、必要だ。

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受け取る側が3Dデータに対応していないのであれば2次元の図面にするしかないが、自由曲面の3次元形状を表現するにはどうしても3Dデータにする必要があるというのはそれとはまた別の話だ。そしてその3DデータからNC切削機等を動かすためのデータを作るというプロセスにおいてはもう図面は必要なくなる。図面に色々書きこまれる線図以外の情報(寸法公差、熱処理や表面仕上げの指定など)は必要に応じて何らかの形で3Dデータに添えて出せばいい。受け取る側が3Dデータに対応しているのであればそれが現実的に一番いいと思う。

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ある自動車部品メーカーでウェブサイトのアップデートの仕事の手伝いをした時のこと、その会社の主要製品を組み込んだ架空の車両をなるべくリアリティ高く作ってほしい(複数の自動車メーカーに売り込むので特定メーカーの車両を使うのは問題があるし、あまり現実感のないものや古臭いのも困る)という、うちにはよくあるリクエストで、ただしなるべく安くとのことで(これもよくあるw)、それでは弊社の手持ちのオリジナルデザインの車両データに部分的な修正を加えて、貴社専用のものとして、そこにエンジンや補器類も含めて貴社の製品を配置したものを作るのがいいかと思いますと提案、その案で基本了承してもらい、サンプルとして手持ちの車両データを見てもらったところとても気に入ってもらえた。(その車両データは評判が良くて他でも色々活躍してくれた孝行者の車両データ)

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それで、では貴社の製品データをご支給願えますか?図面とかでもいいです(図面から3Dデータを起こすのはそれなりに工数がかかるが、最近は情報流出にシビアで外部には出せないというところも多い)、と言うとあっさり3Dデータをいただけることになった。もちろん事前に守秘義務契約を交わしたうえで。
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その時のミーティングには、この種のメーカーさんとの打ち合わせにしては珍しく役員の方が参加されていて、その役員曰く「図面はもうあんまり使っていないんで…。設計データを図面化する手間もバカバカしいし、全部の情報が盛り込めるるわけでもないし。」ああ、この方はよくわかってる。設計上がりの方でその実績を評価されて役員になられたのかなと思った。こいう方がいてくれると話が早くてこちらとしてもとても助かる。私がこのメーカーに出向いたのはその1回だけ。あとはデータのやり取りだけで済んだ。これは数年前のことで、今なら最初のミーティングで出向く必要もなかったと思う。

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こういうことを書いてきて、図面に対してあまりいいイメージを持っていないように思われるかもしれないが、個人的に図面には思い入れがあるし、最初のほうで書いたように好きだ。30歳の時に転職して新潟から神奈川に来て、初めて出社した日、所属する開発部の部長に「大津君の席はそこね。」と言われたところに自分用のいすと大きくはなかったがドラフターがあってそれが嬉しかった。ちょっと感動した。ここで図面描くんだ…、そう思った。

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学生時代に機械工学を学んで製図もそれなりにやったとはいえ、色々忘れてしまっていたからしばらくは会社に機械設計関連の教科書を持って行っていた。先輩や部長から丁寧に教えてもらって、簡単なものから設計させてもらうようになって、図面を描いて製作の方に持って行って、こんなんじゃわからんとよく言われw 直して、また言われ…、その繰り返しで少しずつ覚えていった。

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夜遅くまでかかったり徹夜になったりして、先輩方から、つらくない?と聞かれても「いえ全然です、こんな風に図面描いてそれが仕事なんて嘘みたいで幸せです。」とこたえたら、すごい優等生のような答えだねw と言われたが普通に本心だった。それまでの仕事とは全く違っていて、ほとんどストレスというものを感じなかった。嬉しくて楽しいばっかりで(もちろん現実には色々あったが)、はじめは給料も安かったが、それでも思い切って転職して、遠くまで引っ越してきたけど本当に良かったなと思った。

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同じ開発部の部屋にいる設計歴10年、20年クラスの先輩方のドラフターには色々な細かい情報が書き込まれたレイアウト図などが貼ってあって、すごいなぁ、この図面から本当に動く車が作られるんだ…と思ってよく眺めた。
その会社に20年以上いて、今につながる仕事の基本的なことをその間で全て学んだと言っていい。

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そういう経緯があるので、基本的に図面は好きだ。ある種あこがれの対象みたいなところもある。最初のほうにも書いたが、サイドビューやプランビューで色々な情報が書き込まれたレイアウト図面などは、それだけで魅力的に思えるし、そういうものを額に入れて(額じゃなくてもいいが)壁に飾りたいとさえ思う。場合によっては透視図や3Dレンダリングなどよりもそういう図面のほうが魅力的だ。もうこうなってくると本来の図面の価値とは全然関係無いことになってくるのだが…、ああ、そのためだけに大型のドラフター、手元に置いとけばよかったかな…、やっぱりあの時ちょっと惜しいことしたのかもしれない。

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※画像は本文の内容に関連したものではありません。




大型のドラフター置くなら、部屋も大きくないと…。


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triton

こんばんはtritonです。
ASHさんのスキルは凄いと思います、いつもスマートできれいな画でカッコイイですね。
読ませていただいて昔を思い出しました。
大阪に就職したころ配属された商品開発部でドラフターがずらりと並んで先輩方が作図されているをみてやっていけるのか不安になったものでした。幸運だったのは上司になった方が会社で一番綺麗な図面を描く方だった事です。整然として見やすく分かりやすい図面で、お手本にさせていただき、図面の重さも教えていただいたように思います。

歳は取りましたがもう少しスキルアップして頑張らないとと思います。

もう少し小顔でスマートなスポーツカーやスポーツセダンだ出ないかなーと思いつつ、ミニバンの大顔にため息をつく毎日です。
みんな今のミニバンほしいのですよね。


by triton (2021-06-15 01:05) 

ash_institute

tritonさん、いつもありがとうございます。
お手本にできる素晴らしい方が上司とは恵まれた環境でしたね。

ミニバンでもいいとは思うんですが…、どんなカテゴリーであれ、
素直に美しいとかかっこいいとか思える車が多くなってほしいです。
by ash_institute (2021-06-17 02:24) 

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