IF-02RDSの1号車と2号車の比較、その2はフロントクォーター、サイド、リヤクォーター。
全て上段あるいは左が1号車(Phase 1)で、下段あるいは右が2号車(Phase 2)。
1号車の画像で背景が真っ白なものはCG。
1号車の写真で2013年の東京モーターショーのものは、NY connect の内藤さんが会場で撮影、
ブログで公開されていたもの(写真中に出典元として、サイト名とURLを表示)と、
自分あるいは妻が撮影したもの。


Aピラーの位置と角度はこのように違う。
1号車のフロントウインドーはほぼレーシングカー用そのものの形状で、3次曲面で、曲率も強い。
写真を良く見ればわかると思うが、1号車のルーフの前側半分くらいは、ルーフのようにように見えて
実はボディ色の赤(とセラプリ風の黒)を塗装したウインドスクリーン(アクリルにハードコート
処理を施したもの)の一部で、スクリーンは全体として楕円球の一部を切り取ったような形状をしている。
これを通して前方の景色を見ることを想像していただけばわかると思うが、外の景色がドライバーの
視点に届くのに、中央付近に比べて上側の左右端に近い部分はアクリルを通過する距離が長くなり、
屈折率の影響でその分ゆがんで見えることになる。そのゆがみ幅が大きくなると保安基準で定められた
2重像の数値を満たせない…、ということになる。

1号車のフロントウインドーの3Dデータをガラスメーカーさんでシミュレーションしてもらった
ところ、想像以上にこの数値が良くない。もう全然、保安基準の2重像の数値を満たしていない。
その後そのガラスメーカーさんからもらったアドバイスは、フロントウインドーの形状をより曲率の
緩いものにして、更に3次曲面から2次曲面に近いものにすれば可能性が見えてくる、かも…
というもので、決して、こうすれば大丈夫!というようなものではなかったが、とにかくそういう
形状のデータ作成にトライしてみることに。
ここで問題になるのは特にプランビューでの形状。幅をうんと広げてもいいのなら話は別だが、
そんなことは出来ないので、ある程度拡幅はするにしてもどうしても左右両端は前に行かざるを
得ない…。正直ちょっとつらいなぁと思いながらも、何とかスタイリングとして許容できる限度の
ところでまとめた2種類の形状データを作り、再びシミュレーションしていたいた。

アドバイスが的確だったおかげで、さいわいなことに何とか保安基準を満たす結果が得られたのだが、
それはあくまでもシミュレーション結果であって、本当のところは実際にガラスを作ってみなければ
わからない。保証は出来ないとのこと。ガラスメーカーはめったにというか、まず安請け合いはしない。
そういうことなら試作してみるしかない、ということで試作発注。納期見込み3ヶ月~6ヶ月(!)。
納期長過ぎ…と思ったが、結果としてそこまで納期はかからずに試作品が出来、光学試験の結果も良好!
ということで、その試作品をクレイモデル製作に活用…、以降はその頃のブログで書いてきたとおり。








サイドビューで見ると、Aピラーの位置がどれほど違うか良くわかると思う。
上で書いた2重像の問題はさておき、1号車の視界の良さは特筆モノで、左右が実に良く見渡せる。
こんなにアイポイントは低いのに、フロントフェンダーの見え方とあいまって、車幅とタイヤの位置
の見当がつけやすく、自信を持ってコーナーを攻められる、そういうものに仕上がっていた。
フェンダー上のリヤビューミラーもフロントウインドーの中に良く見える。

これが2号車になるとかなり様相が変わって…、残念ながら1号車ほどの開けた視界は得られていない。
リヤビューミラーも、右側はそのままではAピラーの影にかくれてドライバーのアイポイントからは
まるっきり見えないので、位置を後方に移動せざるを得ない(前方に移動するのはどう考えても無理)、
必然的に視線移動は大きくなる。(これは一般的なドアミラーも同じようなものだが…)
保安基準が何のためにフロントウインドーの要件をそう決めているのか、もちろん理解はできるが、
視界の良し悪しで言えば、視野の端のほうの一部が多少ゆがんで見えようが、そこに障害物(Aピラー)
があって向こうが見えないよりも無いほうが良いに決まっている。 実際に1号車のドライビングシート
に座って外を見てみた経験から、ウインドーの曲率が強くても、こんな連続した滑らかな形状であれば、
その見え方にそれほど違和感を覚えるものではないということもいえる。
一方、たとえばプリウスのような最近のフロントウインドーが強く傾斜してAピラーの根元が前方に
いっている車を運転する時に感じるのだが、はっきりいって実に運転しづらい。斜め前方視界の死角が
大き過ぎるのだ。正直、皆さんよくこんな状況で運転してストレス無くいられるものだな、と思う。
普段マツダのロードスターに乗っている方が、たまたまレンタカーでプリウスを運転する機会があって、
あまりに斜め前が見えなくて閉口したと聞いたことがある。その方は返却するまで車両感覚がつかめず、
気の毒なことにフロントをぶつけてしまったそうだ。
この車(IF-02RDS)の場合、アイポイントは低いがご覧のようにフロントフェンダーがこれでもかと
いうくらいに良く見えるので、1号車でも2号車でも案外車両感覚はつかみやすい。少なくともフロント
ウインドーの向こうに自車のボディの一部も見えないような車よりはよほど良いと思う

ただ、たとえ保安基準が変わって1号車のようなウインドー形状が許されるようになったとしても、
一般的なフロント用の合わせガラスできれいに作るのは至難の業であることは間違いなく、最近ようやく
認可された樹脂ガラス(特殊な表面処理を施したポリカーボネート)でないと成形できないかもしれない。









次回、その3はリヤビューとリヤエンド、リヤコンビライトなどについて比較します。







比較の話以外の話が長くなってしまってすみません…。