今から2年前、私がイケヤフォーミュラさんからの依頼でアスパーク社のスーパーEV(後のOWL、
このときはまだ名前は無かった。決まっていたのかもしれないがこちらには聞かされていなかった)
の開発でまともに寝る時間も無くてクラクラしていたw 4月頃、時々見ていたサイトで見つけた
中国のLeEco(ル・エコ)というメーカーのLeSEEというコンセプトカーです。
この会社は元々あまり自動車とは縁の無いNet系の企業です。親会社に自動車メーカーを持つところも
含めて、この種の振興EVメーカーは中国にいくつかありますが、その中で特にスタイリングがきれいに
まとまっていて印象的だったので、いつかそのうちこのブログで取り上げよう…と思っていました。
ただ、しばらくの間はやらなければいけない事が山のようにあって、ブログどころの騒ぎではなく…、
書くまでに随分かかってしまいました。

LeSEE Chinese Autonomous EV Looks like the First Proper Tesla Rival
https://www.autoevolution.com/news/lesee-chinese-autonomous-ev-looks-like-the-first-proper-tesla-rival-106734.html#

China’s Answer To Tesla Breaks Cover: Meet The LeEco LeSEE [21 Pics & Video]
https://www.carscoops.com/2016/04/chinas-answer-to-tesla-breaks-cover/


あっさり目のレンダリング。(この手のレンダリングは必ずしも開発初期のアイディアスケッチと
いうわけではなく、プレス向けの資料用として実物が出来てから描いたり、3Dデータが出来てから
描いたりもしますので、どのタイミングで描かれたものかはわかりません)
デザインはどこかで見たような…というところが散見されますが、素直にきれいな形の近未来の
車を作ろうとしていることが見てとれて、好感が持てます。







3D CGによるレンダリング。ほぼスケッチのイメージどおり、細部まできれいにまとまっています。
強く意識したであろうテスラなどにも通じる、基本的に素直で滑らかなプロポーションと面構成。
伸びやかさはテスラを上回り、優雅な雰囲気がします。個性を出さんがためのエグイ造作のような
ものが無いのもいいです。







ここはちょっとなぁ…と思うのはフロントドアの下側の開口ライン。こんな風に前上がりのラインでは
足がつかえて乗り降りしにくくてしょうがないんじゃないかと。スーパースポーツで、ドアの開口部が
全体的に狭いとかいうのでなければ、こんな事はしないほうがいいのにな、と思います。(剛性確保と
いう点では有効ですが)



前後のバンパーが引き出しみたいになっているのも、コンセプトカーならではというか、現実的には
やらないことだと思います。ただ、もしも実現するならば、ここのクッションストロークを衝撃吸収
にも有効に使える…なんていうことになるのなら、それはすごくいいと思います。サイズ的には
どんどん大きくなる方向ですが…。





フロント、サイド、リヤそれぞれの下側にある開口部は、恐らく床下にレイアウトする事になるであろう
バッテリーの冷却を考慮したもの、あるいはそれをイメージさせる造作かと思いますが、これらの周囲に
ある縁取りは個人的には無いほうがスッキリしていいと思います。







スタジオの定盤の上の実車、コンセプトモデル。3D CGのレンダリングとほとんど変わらない。
写真で見る限り、少なくともエクステリアの仕上がりは良い。







インテリアも作り込まれてはいますが、あくまでコンセプトモデル然としたもののようです。
ブレーキは容量の大きそうな立派なもの。回生システムがあるにしても、多分かなりの重量になると
思われるので、ブレーキはこういう大型のものが必須でしょう。見た目も良いし理にかなっています。




ショー会場での様子。







インテリアは、よく言えばコンセプチュアル…と言えなくもないですが、そうだとしてもこれが
魅力的かどうかは微妙な気がしますし、どう見てもあまり現実的には見えません。特に後席…。



観音開きのドアもコンセプトカーにはありがちですが、実際にはあまりいいものではないと思います。
開口部の断面を見ると、ボディ側もドア側もいかにもコンセプトカーらしい単純なもので、ウェザー
ストリップらしきものも見当たらず、これでは雨も騒音も防げそうにない…コンセプトカーですから
そこまでうるさいこと言わなくても全然いいのですが、もう少しリアリティを出してほしかったなと。





ということで、個人的には(特にエクステリアデザインに)好感を持っていたこの車ですが…、
冒頭で書いた、私が山ほどの作業にアップアップしているその間に、飛ぶ鳥を落とす勢いのように
見えていた振興EVメーカーの地盤のもろさが顕在化し、この手の↓あぶなっかしい残念なニュースが
色々聞こえてくるように…。

テスラに太刀打ちできるか…中国系EVベンチャー「BYTON」の実力
http://news.livedoor.com/article/detail/14183250/

---------- 上記ページ中ほどから抜粋 ----------
“相次ぎつまずく中国発ベンチャー
一時はテスラのライバルとも持てはやされたベンチャーのファラデー・フューチャーは、
重役の離職や技術的なトラブルに加え、資金繰りが悪化。2017年10月には米ネバダ州に
10億ドルをかけて建設中だった工場の建設を取りやめた。
さらに、ネット分野からEVに参入したLeEco(ル・エコ)も、資金面の悪化でトップが
辞任する事態に見舞われている。こうした惨状を指して、「パワーポイント上だけで
車作りをしている」と揶揄する声もある。”
---------- 以上抜粋 ----------


あぁ、やっぱりこうなってしまうのか…。
あのテスラでさえも経営危機が伝えられていて、先行きがどうなるか何ともいえないような状況に
なっているようですし…。
テスラの場合は、モデルSの完成度の高さに驚愕しましたが、一方で、初期のうちから規模を大きく
やり過ぎではないかとも思っていました。 ですが、そうしなければ生産コストを下げられない、
逃れられないジレンマ…、スケールの大きなばくちのようなものなのはどうしようもないか…。
まぁどんな企業でも仕事でも、多かれ少なかれそういう面はありますが、スケールが何しろ大きい。
個人的には同社に対して希望の星のように思うところもあって、何とかうまくいってほしいと願う
のですが、どうも脳裏にはかつてのデロリアンが浮かんでしまって、心配にもなります…。

EVに実用化の目処がついてからというもの、私のところでこれまでに受けてきた相談も含めて、
どうもこう…皆さんちょっと自動車の生産というか、その前の段階の開発とか、もの作りそのものを
なめてかかっているように感じることが少なくないです。これは物理的なもの作りをしないIT系や
金融系の方に限らず(そういう方に多いのは確か)、日本を代表するような一流企業(自動車系では
ないが工業製品を生産する)の役員などでもしばしばいらして、そういう方の相手は中々骨が折れます。
安く作るためにものすごくお金がかかる、と言うと何だかよくわからないかもしれませんが、
ちゃんとしたものを価格を抑えて生産するためには莫大な開発費がかかる、ということです。
あたり前の事なのですが、それを理解して欲しい、そう思います。

振興EVメーカーはどこがうまくいくのか、生き残るのか?
もしかしたら既存の自動車メーカー意外は結局モノにならないんじゃないか…そんな気さえしています。





日本のメーカーからもこれくらいのモノ、出ればいいのに…。