この車は1969年に発表されたコンセプトカーで、当時この種の車はドリームカーなどといわれていた。
パワーユニットにはガスタービンを想定し、当時の感覚で素直にカッコイイ未来の車を形にして見せている。

当時の車らしく、前後のトレッドが狭くてタイヤが引っ込んで見えるのはちょっと残念といえば残念だが、
それは当時のフェラーリやランボルギーニも同じこと。

ごくシンプルな面構成で気持ち良く先がとがったウェッジシェイプは当時のトレンドの王道。
ウインドーグラフィックスも明快。全体的にクリーンでモダン、認識しやすい形状。
いい意味で車の未来に輝くような夢が見られた、国産車のコンセプトカーの中で最も好きな一台だ。

私のところでもこういった未来の車というようなテーマで時々お仕事をいただくことがある。
エクステリア(外装、外観)だったり、インテリアだったり、メーターだけとかいう場合もある。


ただ未来っぽいといっても人によってイメージがバラバラで、その人が考える未来というものを
予測してうまくまとめないとならないので、そのイメージをつかむまでがちょっと厄介なことが多い。


見たこともない目新しいものを!なんていってても、たいていの人は本当に見たことのないものを
いざ見せられると拒絶することが多い。拒絶までいかないにしても、何となくこういうのじゃなくて…
なんて反応をされる。

それでもそういう反応を見て、少しずつ気に入ってくれそうなものにたどり着ければいいのだが、
まぁ私あたりのところに来る話はたいてい切羽詰ってて、もう時間が無い、頼めるところも無い、
うちもそれは無理です、といっても、そこを何とか、なんていうことが多い。



考える時間もやりとりする時間も無く、明確な指示も無く、雲をつかむような話で、
いったいどうやってよい結果を出せというのか…。

デザインの初期や、結果としてうまくいかなかった時とか、時々こうやって自分の好きな車を
見つめなおしてみるのだが、このEX-Ⅲが45年前に作られたものであるということ、そこから現代に
至るまでにどれだけデザインが進歩したというのか、その進歩の幅や質を考えるとちょっと悲しく
なるというか、なかば愕然とする。






60年代末から70年代なかばまでがカーデザインの黄金期、だ思う…。