フェラーリ・エンツォが売りに出ています。


Virtually Brand New Ferrari Enzo For Sale Has Only Pre-Delivery Inspection Miles http://www.carscoops.com/2015/11/virtually-brand-new-ferrari-enzo-for.html


上記サイトによれば、事実上新車のフェラーリ・エンツォ。走行距離は登録検査前のものと思われる220kmのみ。
英国登録、1オーナー(実際には走ってもいないらしい)。オリジナルの書類完備。販売価格4億6千万円超(!)
ということのようです。











日本人デザイナー、奥山清之さんがピニンファリーナ在籍時に手がけ、その名を世界に知らしめた、
当時のフェラーリのフラッグシップカーであることは有名ですが、その開発時のエピソードもすごい。


“10年に一度、チャンスが巡ってくるか来ないかわからないスーパーカー・プロジェクト。社内呼称「FX」は
スタートしてから2年を経て、混沌を極めていた。あの日、デザインにOKが出なければ、プロジェクトは
時間切れで中止になりそうな時点まで来ていた。一度提出した案は否決されていた。
会長を待つヘリコプターのエンジン音が響き渡る中、残された最後の15分で描き上げた、文字通り渾身の一枚。
自分の人生の中で、恐らく最も凝縮された15分。あの瞬間のことは、生涯忘れないと思う。
帰りかけていた会長に、通路で息を切らせながら、僕はギリギリで仕上がったスケッチを見せた。
「やればできるじゃないか」
次のプレゼンまで残された期間は4日間。その中でレンダリングを描き、社内のモデラーとエンジニアに指示を出し、
原寸のモデルを完璧に仕上げなくては先につながらない。常識では、今まで2年掛けてもいかなかったクルマを、
わずか4日で完成できるわけがない。でもできなければ終わる。不可能にも思えることを成し遂げ、常識を覆すのが
僕らの仕事だ。”

奥山さんの著書「人生を決めた15分 創造の1/10000」 冒頭の文章より抜粋 


2回目のプレゼンにも満足することはできず、帰ろうとする当事のフェラーリ社会長、ルカ・モンテツェーモロ。
彼を乗せるためのヘリは既にエンジンをかけて、彼が乗り込むのを待っている状態。
ここでモンテツェーモロ会長をそのまま帰して、このプロジェクトが中止になってしまっては、長年にわたって
フェラーリのスタイリングデザインをほぼ独占してきたピニンファリーナ社としては、どう考えても非常にまずい。
そこで当事の同社ダイレクター、ロレンツォ・ラマチョッティ氏は奥山さんに、「私が何とか時間を稼ぐから、
その間に何とか別案を描いてくれ。時間は20分、いや15分が限界だ。」というような指示を出し、奥山さんは
それにこたえて本当に15分で修正案のスケッチを描き上げて走って持っていった…ということだそうです。
このエピソードは奥山さんの著書以外でも、講演などで奥山さん自身の口からも語られていますので、お聞きに
なられた方もいらっしゃると思います。私も聞きましたが、なんともすごいエピソードです。









上記のエピソード、すごいエピソードなのですが…、
猛烈に急いで描いたスケッチを基にして、4日間という突貫も突貫で仕立てたモデルが元だからというわけでも
ないのでしょうが、出来上がったエンツォのデザインは結構乱暴というか、熟成不足に見えるところが散見され、
これでほんとにいいのかな… と思えるような処理が目立ちます。
特に気になるのはフロントウインドー上端とルーフのつながりが滑らかでなく、カクッとしているところ。
ここは2002年、東京都現代美術館で行われた「疾走するアート:フェラーリ&マセラティ“アルテディナミカ”」で
見たFXの1/1モックアップでは普通に滑らかにつながっていて、ここまでひどくなかったので、恐らく合わせガラス
の成形上の問題。そうだとしても、それを考慮してガラスの上端を少し下げて、ルーフ側もフロントガラスとの連続
性を持たせた曲面にすればいいはずなのですが、そうなっていない。上方の視界用件もあるのかもしれませんが、
単純に開発の遅れからの時間切れでこうなっているのだとしたら、なんとももったいない…。
このクルマが奥山さんが手がけた多くのモデルの中で一般的には最も有名なことは間違いないですが、
それが必ずしもベストデザインとは限らないと思いますし、最も奥山さんらしいとも思えないです。
個人的にはプジョー・ノーチラスあたりが最も印象的で、奥山さんらしいエレガントさも感じられて好きです。
リヤビューなどに少しばかり未完成な感じはありますが、他の部分の魅力が大きいです。

Peugeot Nautilus (Pininfarina 1997)
http://www.conceptcars-peugeot.com/peugeot-nautilus-pininfarina/







エンツォの販売価格は確か日本円で7850万円だったと思います。もっとも、市場での流通価格はこの新車価格を
下回ることはなく、ほぼ1億円以上、それもだんだんと上がっていく一方ではありました。
フェラーリ社に購入権ありと判断されて、新車で購入して、保管して、今この価格(4億6千万円)で売れたら…
確かにものすごくいい投資ではありますね。






初めてエンツォの写真見た時の衝撃…決していい意味ではなかった…。