随分間が開いてしまいましたが(2月いっぱい仕事がきつくてキツクテ…ブログどころの騒ぎじゃありません
でした)、前回取り上げたランチア・ストラトス・ゼロに続いて今回取り上げるのは、そのストラトスの
量産版に向けてのプロトタイプ、ストラトスHFプロトタイプ。名前こそ同じストラトスとつきますが、
形はかなり変わって、かなりまともというか、すくなくとも不通に乗り降りできるようなごくまっとうな
ドアがついています。
とはいえ、この形。2次曲面の一部を切り取ったと思われるフロントウインドーの形状が特に印象的です。


1971 Lancia Stratos HF Prototype - Conceptcarz
http://www.conceptcarz.com/vehicle/z1573/Lancia-Stratos-HF-Prototype.aspx






このフロントビューはいつ見ても惹かれます。シャープでモダンで、当時考えられた未来を感じます。
横から見ると、前から見た印象と違って、あれ?っと思うほど、かなり寸詰まりなことに驚きます。
もっとうんと長く見えた鼻先はこんなに短くて、ホイールベースも極端なまでに短く、全体的には
こんなに短いのか…。


実際にはコンパクトでありながら、もっとずっと大きくて立派なものに見える、こういうのはとても
優れたそして魅力的なデザインだと個人的には思うのですが、これにはノーズ全体の強い傾きと
フロントウインドーのやはり強い傾き、そしてプランビューでの絞りがほとんど無いことなどが
あいまって、前から見たときにルーフが随分遠く、フロントエンドから距離があるように見えて、
ある意味遠近感を狂わされてこう感じるのか…、この感覚は当時のいわゆるスーパーカーの多くで
しばしば感じられることで、好きなポイントのひとつです。




フロントはとても好みなのですが、このリヤコンビランプは…、
なんかもうちょっとやりようが無かったものかと正直思います。



このドアハンドルも、よく見るとこんな針金みたいに細いレバーで、色々むき出しのまま。
機能を満たせばそれで良しということなのか、ある意味アヴァンギャルドなのか…。



こういうシンプルな矩形を並べたパターンのスリット状のエアアウトレットはこの頃のベルトーネ
作品、アルファロメオ・カングーロとかモントリオールとかでも見られる処理ですし、車に限らず
この頃の他の工業製品でもよく見られたデザインで、いわば当時のトレンドといえるものだったと
思います。いい意味で当時を感じられて個人的には心地よく思えるところのひとつです。



ホイールも近くで見るとこんなことになっています。鋳造の鋳肌も粗さが当時らしいです。
このホイール、あまり軽そうにも見えないし…、これに関しては市販版のスポークの長いほうの
デザインが一番いいと思います。




こちらに向かって走ってくるHFプロト、カッコイイです。



走り去る後姿は…、悪くない、ですね。 リヤコンビランプはやっぱりちょっとびっくり、
なんですけどそれでも全体的な雰囲気が周囲の景色から浮いてて非日常を感じさせてくれて、
そのことのほうが大きくて、単独で見ると何でこんな…と思ったリヤコンビランプもそれほどは
気になりません。



多分本物だと思うのですがなんだかミニカーっぽく見える写真。
この車はそう見えることがしばしば。





フロントフェンダーは大きなホイールストロークをまかなうために一般面から飛び出した形に
なっていて、それがこの車のデザイン上の魅力のひとつにもなっているのですが、その他の部分、
全体的にはごくシンプルな造形といえます。
短く極端なウェッジシェイプ、豊かな張りのサイドパネル、それだけで造形されたウェストライン
より下のボリュームに、2次曲面から切り出したシンプルにしてシャープなイメージのフロント
ウインドーとそれにつながるサイドウインドーとルーフで構成されるキャビンを載せた、
わかりやすい(認識しやすい)造形。余計なものがあまり無く、それがとても心地よく魅力的です。
うるさいほど色々なキャラクターライン、プレスラインの入った最近の多くのものよりもずっと。




隣のターコイズブルーというかエメグリーンというかのコンセプトカーも当時らしいデザイン
ですが、おもむきはかなり異なります。






この前後カウルの開き方がまたいいですね。


カウンタックもそうですが、このストラトスもこのデザインで(市販版はまた少し変更はありますが、
形状的にはほぼこのままといえますので)実際に市販車を作って売ったということがすごいと思います。
しかもストラトスの場合は世界ラリー選手権に出て、総合優勝するという目的をきっちりと達成して
いるのですから、もう本当に立派、大したものです。このデザインだから速かった、このデザイン
だから勝てた、というわけではないんでしょうが、何にしても、こんな形の車がラリーで本当に速い
なんて、関係者以外は信じられなかったのではないかと思います。








ゼロもいいけど、こっちのプロトタイプもいいなぁ、すごく魅力的…。