レイアウト定盤の上にシャシーをセットし、そこにキャビン、フロントカウル、リヤカウルをセットし、
仮組みしてみる。




最低地上高さの見直しがあって、シャシー対してタイヤ/ホイール位置が当初の設定よりも相対的に低い。
そのため、フェンダーとタイヤの隙間が大きい。これでは1G状態でありながらリバウンド状態のようだ。
これではよろしくないのでボディ側を延長して修正することにする。上下だけで無く、合せて前後方向も
微修正する。


キャビンはフロントサスペンションのショックアブソーバーなどとノクリアランスはギリギリ。
このキャビンのフロントエンドは、左右に雨水を流すために小さな雨どい状の断面形状で左右に勾配が
つけられている。これは NY Connect の内藤さんが手作業で造形してくれたのだが、このサスペンション
レイアウトのせいでその勾配はごくごくゆるいものにしかできなかった。


フロントエンドのサブフレームに付くフロントカウル開閉用のヒンジ、マウントブラケット類。


サイドポンツーン、サイドステップ。

上記のキャビン前端以外でも、いたるところがギリギリの設定なので、部位によってはサブフレームや
補記類、パイプ類などの細かい干渉が何ヶ所か発覚する。(シャシーに対するタイヤ/ホイール位置の
変更があったことも影響していると思われる…)そういうところは基本的にサブフレーム類やブラケット類
を修正してもらって対応していく。

ホイールアーチの修正をどれくらいにするか、要所のポイントを測定。“あたり”をつける手がかりとする。


リヤウイングのステーも取り付け。この角度だとホイールクリアランスが大きい(大きすぎる)のが目立つ。


フロントカウルも同様に要所を測定。



フロントカウル開閉用のヒンジ、マウントブラケット類を仮組み。
ヒンジは通常のヒンジと違ういわゆるダブルリンクタイプ。

マウントブラケットに多数の穴が開いているのは、これをフロントカウルにFRPで貼りむため。
簡単に機械結合すれば…例えばFRPカウルを貫通してボルト/ナットで締結するような構造なら簡単だし
安心だが、見た目的にそれはあんまりなので、外観に影響しないようにこういった構造としている。


フロントカウル開閉用に使ったダブルリンクヒンジについて補足説明すると、これは各リンクの端部の
回転中心を結んだ2本の線を延長した交点が仮想回転中心となり、今回のレイアウトの場合、このヒンジ
本体の位置よりも前方の空間上にその仮想回転中心を設定することが出来る。そしてその位置は開く角度に
よって刻々と連続的に変化していく。
それによってどういうメリットがあるかというと、フロントカウルを開けようとすると、まず上方に
浮き上がるように、回転というよりも平行移動するように動き始め、シャシーから離れながら回転角度を
増していく。そして最も開いた時にカウル前端が地上やシャシーにぶつかるようなこと無く、十分高い
位置にいられるようになる。
普通のヒンジではどうがんばってレイアウトしても干渉やら何やらで開かないとか、そもそもヒンジを
置く場所が無いとか、不用意に開けたら前端が地面にぶつかりそう…、などという困った状況の時に
このタイプは有効だ。
(ただ、構造上、普通のヒンジほどの剛性は望みにくいし、上記のようにその軌道は現物の動きを
見ていても予測しにくいので、関連するものの設計、例えば開閉補助のために入れるガススプリングの
レイアウトなどは少しばかり気をつかう)実際に、過去に手がけた多くのコンセプトカーでは、この種の
ヒンジを使わないことにはどうにもならないケースも多く(自動車メーカーのデザイナーでも、こういう
事にはまるっきりおかまい無しに見た目だけでボディ形状もパーティングラインも雰囲気だけで決める人は
案外多い。それどころかもっと全然驚かせてくれるような認識の人も少なくないが…)、いくつもの
この種の汎用品を試したり、それもダメな場合にはオリジナル設計で長いリンクを組み合わせたものを
わざわざ削り出しで作ったり…、色々なことをやった。今回のこれはそれらに比べるとかなりシンプルな
ほうといえる。



写真は全て、この作業をお願いしている NY Connect の内藤さん撮影。





シャシーにボディがのって、ちょっと車らしくなってきた…。