黒バックの撮影が終わると次は白バックに。黒バックの雰囲気もいいが、個人的には白バックのほうが
好き。形状の全容がつかみやすいし、明るい感じがいい。
本当は野外で明るい日差しの中、新緑のリゾート地とか南欧風の街並みとか、そういった美しい景色を
背景にしたところを見てみたいが、それらはこれからのお楽しみだ。







背景の黒幕を片付けるためにいったん車を撮影スペースに移動。








くだんのインナーレンズを装着したフロントウインカー。


ドアヒンジにはこんな感じでAピラーと同色に塗装されたカバーがつく。


ウインドー越しに見えるインテリアも、1号車よりも少し量産車風な処理がなされて質感アップ。

ワイパーも不安要素のひとつで最後まで心配していたのだが、何の問題も無く車検は合格。
保安基準ではドライバーのアイポイントを基準として上下何度、左右何度の範囲の領域の80%以上の
払拭面積が必要とのことで、もしかしたらメルセデスベンツの何世代か前のEクラスで採用されていた
ようなリンクを使ったワイパーアームが必要になるかも…と心配していたのだが、結果、その必要は
無かったと。ちょっと拍子抜け気味だが良かった。
イケヤフォーミュラのFさんによれば、このシンプルなシングルワイパーでかなりいい感じに雨水を
拭き取ってくれるそう。ちなみに私はワイパーの選定はしていない。イケヤフォーミュラさんのほうで
選定した量産車用のワイパーを、このガラスの形状に合わせてアーム部分を手曲げで成形したそうだ。
いつもながらさすがである。

実は1号車の開発を始める頃に(きっとこんな曲率のきついガラスではワイパーが問題になるだろうから
それを後回しには出来ないと思い)ワイパーメーカーに相談したことがあるのだが、その時に一般的な
形状のブレードで拭き取れるガラスの曲率はおおむねR900が限界であることと、いわゆる“卵の表面”
は拭けません、と明言されていた。結局そのワイパーメーカーはこの車の専用品は開発できないとの
ことで、話はそこまでとなるのだが、非常に有用な情報を教えていただけて感謝している。
それで、1号車の時はともかく、2号車、つまりこのロードバージョンではそれらの条件を満たしつつ、
なるべく1号車のようなというか、本物のレーシングカーのようなイメージを残すようにとデザインを
していくのだが、特にフロントウインドーとサイドウインドーの面の連続性には気をつかった。ここが
うまくいかないとこの車のイメージが保てない。一般的な量産車と大きく違うところのひとつである。
Aピラーの位置と形状は3Dデータで何度も検討したが、それがクレイモデル化され、FRP化され、塗装
されて…リフレクションが素直にきれいに通っている事を確認できて、ようやくここに関してはとりあえず
ひと安心となるのだが、データ上、モデル上では形になっても、ガラスを作る上ではどのウインドーにも
保安基準の二重像の問題などがついて回るし、ガラスメーカーの成形上の制約(極端な3次曲面は難しいし、
全くの2時曲面もまた難しい)もある。もう色々盛りだくさんである。
開発の途中でガラスメーカーの事情が変わり、別のメーカーにお願いしなければならなくなったりもして…、
今思い出しても良くものに出来たなと思う。
このもろもろ全てを乗り越えた上で、ワイパーがちゃんと必要な面積を拭き取ってくれるのか…、
ナンバーが取れるまで、心配は尽きなかったわけである。





撮影スペースの外で照明を落としたところ、何だかいい雰囲気。ちょっとドラマチックな絵柄に
思えたので写真を撮っていると、池谷さんも同じことを思ったとのことで隣でパシャパシャ。
やっぱり好みが似ている。



白バックの準備が整い、撮影再開。まずはフロントから。











次にリヤ。



リヤウイングの幅も保安基準を満たすため、1号車から片側120mm程短縮されている。
1号車ではほぼ全幅に近いウイング幅でワイド感が強調されていたが、それは少し薄れた。
それでも、ロードカーでこんな大型で本格的なウイングはそうそう無いだろう。



本当はリヤエンド右側には1号車と同じように Ikeya Formula の筆記体のエンブレムがつくのだが、
私が別の仕事(今回の東京モーターショーにおけるイケヤフォーミュラさんのもうひとつの目玉)
のデータ作成で死にそうになっていて(本当にここ何年かで一番きつかった…)手配が遅くなり、
この撮影時はまさに製作の真っ最中で間に合わず。

それどころか、普通に作っていたら東京モーターショーの開幕にも間に合わなくなる…というので、
無理をお願いして他の比較的納期に余裕のあるものと順番を入れ替えてもらうなどして、何とか
ショーの開幕にだけは間に合うようにしていただくことに。
こういう仕事をしていると、いつもどこかに無理をお願いしなければいけないようなことになるが、
その無理なお願いにがんばって対応してくださる皆様方には、ただただ感謝しかない。



あと(多分)1回、スタジオ撮影の様子が続きます。





これが夜中の3時頃。皆さん眠さと疲れに耐えながら撮影は続く…。