今年2019年3月に公開されたフェラーリが個人オーナーの注文によるワンオフ・モデルです。


フェラーリP80/C
https://www.webcg.net/articles/gallery/40670

世界に1台!フェラーリのワンオフ・モデルが登場!
https://motor-fan.jp/article/10008948

フェラーリP80/C発表
https://www.ferrarilamborghininews.com/blog-entry-15711.html

Four years in the making and making its first public debut. (動画あり)
https://www.motor1.com/news/358535/ferrari-p80-c-looks-epic-goodwood-hill-climb/

Stunning Ferrari P80/C Spotted Lapping Monza For A Video Shoot(動画あり)
https://www.motor1.com/news/353216/ferrari-p80-spotted-lapping-monza/


製作に約4年をかけ、スタイリングはかつての330 P3/P4やディーノ206Sにインスピレーションを得た、
サーキット走行専用モデルとのことです。フェラーリは過去にも何度かワンオフモデルを製作してますが、
このP80/Cはあるフェラーリ・エンスージアストがオーダーしたものだそうです。
2015年からスタートした製作期間は約4年。これは過去のワンオフ・モデルと比較しても異例の長さで
それだけ風洞実験や性能パラメーター分析などに時間をかけたということで、アプローチすべてが従来の
ワンオフ・モデルとは異なるサーキット専用車、 とのことです。ものすごく贅沢なことをしたものです。




今回も内容もさることながら、私がこの車に注目したのはその顔つきとか全体のスタイリング。
これもかなり好みです。
シャープでなめらかな造形のノーズ、ヘッドライトはありません。さすがサーキット専用車。
あると色々気になることがあるヘッドライト自体がありませんので、その分非常にスッキリ、
かつてのリトラクタブルライト装着者と通ずる顔つきです。




ミッドエンジンフェラーリらしいある意味オーソドックスなボディスタイルに、考えられることを
色々盛り込んだ各部の処理。エアインテーク、アウトレット、スリット、ウイング類…。
サーキット専用車でありながら、過去のフェラーリのロードカーと重なるイメージをうまくまとめていて、
特にフロントエンド、ウインドーとキャビンまわり、前後フェンダーなどの造形から、私の大好きな
288GTO(正式にはただGTO)と似た雰囲気を持っていて、とても惹かれます。




ヘッドライトの無いすっきりしたフロントまわり。


この車もテールライト(?)は丸型ではありません。ここも好ましい。


なんだか少し懐かしくてキュンとなるようなフロントクォータータービュー。走る姿がとても魅力的。








前後カウルは脱着式で開閉のためのヒンジとか無いのか…、この写真からはわかりませんが、外観に
ズースファスナー等は見当たらず、とてもきれいにまとめられています。本当に前後カウルが脱着式なら
思い切りのいい大胆な割り切りだと思いますし、いわゆる“本物”に対する強い思い入れを感じます。




無骨というか無造作に見えるX型の補強パイプ。見た目はともかくこれは非常に効果的で合理的。
サーキット専用車はこれでいいわけです。
2つの大型のインタークーラーと導風ダクトのレイアウトから、ボディサイドのエアインテークの
上側2/3ほどはここに冷却風を通すためのものであることがわかります。インタークーラーを抜けて
少し暖まった空気は、エンジン上部の熱気とともにエンジンフードに設けられたルーバー付きの
エアアウトレットと、リヤエンドの大きな開放部(ごくシンプルなメッシュが張られている)から
排出されていきます。このエンジンフードの上が(中速度域まではともかく)高速度域ではちゃんと
負圧になっていることがこの後で紹介するCFD解析(空力シミュレーション)画像からわかります。



サーキット専用車らしく、ステアリングにはこれでもかと色々なスイッチ類がレイアウトされていて
いかにもな雰囲気です。ナビゲーションや色々グラフィカルなインジケーター類はありません。
センターパネルにはトグルスイッチがたくさん並んでいて、本物のレーシングカーらしいのですが、
この手のスイッチは人によっては古くて先進イメージがないと嫌がられることもあります。ですが、
個人的にはわかりやすいし操作しやすくて好きです。この種の車にこの雰囲気はいいと思います。


これはちょっと…どういう状況なのかわからない写真。明らかに一回は塗装を済ませたとおぼしきボディ、
そのボディ後半に何らかのダメージを受けてその補修をしたか、何か問題があって修正を加えたかして
再塗装するためにペーパーかけたような…。








ここからCFD解析(空力シミュレーション)のスクリーンショットと思われる画像です。
赤っぽいところが正圧(高圧)、グリーンからブルー系にいくほど負圧をあらわしています。(多分)
最初の2枚は中、高速域でしょうか、




上の画像に近いアングルのこちらはより高速での様子だと思われます。赤いところは少し色が濃くなり、
それにも増してブルー系の負圧のところがグッと目立ってきています。エンジンフードの上も、ほんのり
正圧だったものが、明らかに負圧に変わっていることがお分かりいただけると思います。



これは珍しい、ボディ下面と断面の画像。少しですが内部までエアフローがわかります。フロントエンドの
下面形状、フロア後半の小型エアインテーク(NACAダクト)、リヤディフューザーと、色々興味深いです。



ここからはスケッチ類。









こういう絵は必ずしも開発初期に描かれたものではなくて、車が出来てからメディア向けに見映えのする
ものを描いたりすることがあって、そうだとするとちょっとありがたみが薄れるのですが…、
そうだとしても、形自体がいいので最後のものなど純粋にイラストとしても魅力的です。





サーキット専用車のワンオフとはいえ、こんな風に公開するということはフェラーリとしても世界に
アピールしたかった、それだけのいい出来なのでしょうね。
こういう車をこういうデザインで作ってくれたということが、見ているだけのこっちも嬉しくなります。






好みのデザインでこんなのを作ってもらうなんて、ほんとに夢のような話…。