最近しばしば目にする言葉、MBD(Model Based Development):モデルベース開発。
モデルベース…、モデルというからには何か既存の車とか、何らかの形のあるものをを
叩き台にして開発することをいうのかな?と思ったのだが、そんなことは当たり前に
ずっとやってきていることだし、何を今さらあらためて…などと思ったのだが、
どうもそういうことではないらしい。

自動車開発の「MBD=モデルベース開発」って何? | オートプルーブ - Auto Prove
https://autoprove.net/supplier_news/dspace/30169/

このサイトの2/5程度のところの記載、
“ここが大事!これがMBDの正体だ
~具体的には、まず、要求分析(仕様書)にある制御ロジックや制御対象が計算式などで
表されているものを、ブロック線図にしたものをつくる。これを「モデル」と呼んでいる。”

記事を読んで、え、これをモデルっていうの?
モデルって言ったらクレイモデルとかハードモデルとかスケールモデルとか(↓のようなの)、



そういうものを自分としてはイメージしてしまうので、ここで言う「モデル」が上記のような
内容をブロック線図にしたものということなら全然イメージしたのと違うわけだ、なるほど…
などと妙な納得の仕方をした。

そして、この記事全般読んでみて、モデルベース開発といっているのは、幾重にもなった
統合型の高度なシミュレーションというようなものかと自分としては理解した。
そして、だったらそういってくれればいいのに…とも思ったのだが、こういうものは言い出した
ところ、イニシアティブをとって進めているところが使う名称がスタンダードとなるものだから、
そういうことなのだろう。そこに私にはわかっていない何らかの意図があるのかもしれないし。



もうひとつ、個人的にこの種のサイトの中では信頼できると思っているモーターファンのサイト、
Motor-FanTECH(モーターファンテック)で読んだ記事、

内燃機関超基礎講座 | マツダSKYACTIV開発を支えたMBD:MILS/HILSとは何か|
Motor-FanTECH[モーターファンテック]
https://motor-fan.jp/tech/10017724

この記事の最後に書かれている
“「MBDの最大の価値は、最適な答を机上で見つけることができるということ。究極的には世界で
最初に答を見つけて、世界で最初にその山に登ること、それがMBDの価値だと思います」と
原田氏は述べる。ただし、「MBDは若いエンジニアだけではだめなんです。超一流のエンジニア
が使ってこそ価値がある」と付け加えた。”

この言葉には非常に共感する。
新しいテクノロジーが広まる時、それまでの技術で第一線にいていわゆるエース級の活躍をして
いた人達がこれを活用していかないと全然ダメなのだ。



これを読んで思い出したことがあるのだが、それは90年代の後半、デザインの現場に3D CAD、
3D CGが台頭し始めた時のこと。キャリアのあるスキルの高いデザイナー、モデラー達の多く
(年齢的にも中堅以上)はそれを自分で扱おうとせずに、そういうのはPCに慣れてる若い人達が
やればいい、自分達はそれまで培ってきた技術を活かしてそれまで通りの作業をするのが効率的
だし、必要があればそれが得意な若手やオペレーターに指示を出してデータ化すればいい、
(今さらそんなものの操作を習得するの面倒だし…)、そんな風に考えていたようだった。



操作に慣れていないと複雑な曲面などは作るのに苦労する。初期の頃のソフトウェアにはまだ
色々と制約もあったりして、結果として“作りやすい形にしてしまう”という、あまりよろしく
ないことがしばしば起きてしまう。若手のデザイナーだから、本来のデザインスキルも未熟
といえば未熟…ということもあいまって、出来上がったものはなかなか良い評価がもらえる
ようなものにはならない…。
初期の頃はそれこそ結構悲惨なものも結構目にしてきた。本当にひどいものはひどかった。



そんなこともあったので、CGなんてやっぱりダメだ、手描きのスケッチの頃にはあった魅力が
無くなった、3D CADなんてデザインには無いほうが良かった…、そんな声があがることも
ある程度はしょうがないことだろうし、そういう人たちも気持ちもわからないでもない。

中には中堅以上のキャリアのあるデザイナーで、そこに可能性を見出して自ら進んで技術を
習得し、その方面で一時活躍された方もいるにはいるが、肝心なデザイナーとしての能力と
いう面では、一流だったかといわれると…正直なところ少々疑問が残る。

能力の高いデザイナーと、スキルの高いモデラーのコンビネーションが望ましいのは今も昔も
同じだが(ひとりで両方やれる稀有な方も少数ながら存在するが)、モデラーが3D CAD
オペレーターに代わり、デジタルモデラーと呼ばれるようになり、相応の結果を出せるように
なるまでには少々の(個人的には想像以上の長い)時間が必要だったと思う。



デジタルモデラーの中には、より美しいものにしよう、バランスの取れた形の良いものに
しようと色々苦心して配慮してくれる人もいる(こういう人大好き)が、こういうのはもう
本当に人それぞれだ。
面が滑らかにつながっていて技術用件を満たしているのだから他の事には責任は持ちません、
というような人もいる。本人がそれを意識しているかしていないかは別にして。
それでいいんですけどね、本来の責任分担としては…。



これは、CADの操作に精通していてもそれだけでは設計は出来ない、機械工学の知識や実際の
設計経験が無いとモノは作れない、というのと少し似ているのだが、スキルの高いデジタル
モデラー(3D CADオペレーター)が作るデータはデータとしての品質は十分に良いものに
なった今も、それを魅力的なモノに出来るかどうかはやはりデザイナー(或いはプロデューサー)
の能力、創造性とか造形感覚によるところが大きい。



今回取り上げたMBD:モデルベース開発に関しては、デザイン界のCG化、3D CAD化の時の
ような変なもたつき無しに、各社の一線で活躍されているエンジニアの皆さん、超高速で
モノにしてほしいと思う。
多重的で高度なシミュレーションという、今やどう考えても非常に有用な技術と素直に思える
ものなので、上記の「MBDは若いエンジニアだけではだめなんです。超一流のエンジニアが
使ってこそ価値がある」という言葉は本当にそのとおりだと思うし、価値があるどころか、
そうしなければならないものだと思う。
一流の熟練エンジニアのイマジネーションがこの新技術を正しい方向に導いてくれ、
ひいてはそれが望ましい未来につながっていく、そう信じたい。


※各画像は本文の内容とは関係ありません。









高度なシミュレーション、こんないいもの、やらない手は無い…。