EVらしい形、デザイン… [車、カーデザイン、ミニカー]
先日、新型プリウスがアメリカで発表されましたが、プリウスの初代が発売されてからもう随分たちます。
1997年に発売され、“21世紀に間に合いました”というコピーはちょっと印象的でしたのでよく覚えています。
その後各社ハイブリッドEVや純EVをリリースし、プリウスは2代目、3代目とヒットを飛ばしていくわけ
ですが…、この頃からよくいただくようになったリクエストに “EVらしい形” というのがあります。
ですが、はっきり言ってそんな形、デザインは無いと思います。
2代目以降のプリウス(と、やはり2代目ホンダ・インサイト)の形が強いて言えばそうなのでは、
と思われるかもしれませんが、あれらはハイブリッドEVだからああいう形というわけではなくて、
燃費を良くするために空力優先で考え、煮詰められた形と考えたほうが妥当です。
ものすごい投資をして開発したハイブリッドEV、それをなんとしても沢山売りたい。
そのためには圧倒的で説得力のあるスペックが欲しい。
動力系以外で超低燃費にする方法として、タイヤを細く硬いものにして、ボディ形状はなるべく
空力優先で…、そういうことです。
フロントウインドーの傾斜がきつくて、Aピラーの根元がズドーンと前にいってて、スカットル
ポイント(インパネの前端)も高くて、だからあのボディサイズの車にしては前方の見切りが極端に
悪くて、はっきり言って運転しにくい。(実際に、普段ロードスターに乗っていて、たまたまレンタ
カーで3代目プリウスを借りたところ、前が見えなすぎてフロントバンパーを軽くぶつけてしまった
という方を知っています)
でも、燃費優先だし、こういう形が目新しくて先進的に見えて良さそう、だからまぁいいや。
そんな感じではないかと思います。(ちょっと乱暴な見立て…)
日産リーフは、その “EVらしいデザイン” に挑戦した車のひとつだと思うのですが、あのデザインが
魅力的とはとても思えませんので…、残念ながら成功(デザインとしての目的を達成した)とは
いえないでしょう。
日産のEV戦略が同社のもくろみ通りにいかなかったのは、電池の性能向上が思ったように進まなかった
(航続距離が伸びず、充電時間も長いまま)のが一番の原因なのでしょうが、あの見た目もリーフの
販売不振に大きく加担していたのではないかと思います。本当にあれは残念…。
純粋なEVとして魅力的に思えるのはアメリカのベンチャー企業、テスラ社のモデルS です。
同社の最初のモデルはロータスエリーゼをベースにしたものでしたが、2作目の完全オリジナル
デザインのこの車が、あそこまでの完成度を持っていることに驚きました。これはモーターとか
電池とかの動力系の事では無くて、ボディや内装の事なのですが、それらがまさに驚愕のクォリティ。
写真を見て、え?マジでこんなクォリティなの?すごいんじゃなかろうか…。でもまぁ広報用の
写真だしな…。
そう思っていましたがモーターショーで現物を見て、こ、これは、本物だぁ!! そう思いました。
なぜオリジナルデザインの最初の車でここまでのものが出来るのだろう?まるで魔法のよう…。
仕事柄、過去に韓国や中国のメーカーの車をいくつか見てきましたが、少し前の中国車はもちろん、
90年代の韓国車よりも明らかにクォリティは高く、それどころか現代のプレミアムブランドの車と
比べても遜色無いように思えます。
ボディパネルの曲面の質感、パネル同士やパネルとライトなどの部品との合いの良さ、チリも小さく
均一です。内装に関してはマテリアルの高級感はそれなりですし、インパネに強引にレイアウトした
巨大タッチパネルのデザインなど、やや熟成不足な感は否めませんが、それでもやはりエクステリア
同様それぞれのパーツ同士の合いの良さは特筆ものに見えます。少し前のイタリア車やフランス車全般…、
いや現代のそれらよりも上かもしれません。
こういうのは細部まで行き届いた設計と、部品メーカーがそれぞれクォリティの高いアウトプットを、
高度な連携を持って行わない限り実現しません。それを一発目で決めてきたところが驚異的です。
かつて見たベルトーネだかIDEAだかがデザインして設計にも関わった韓国車(スタイリング自体は
良かった)とか、ピニンファリーナがデザインと基本設計をやった中国車(これは…スタイリング
自体もちょっとアレでした)とか、悪夢のようにひどいクォリティだったことを考えると、テスラ・
モデルSがどれほど奇跡的な車か、まさに別世界の出来事のようです。
と、テスラ社と同社のモデルSを絶賛してきましたが、そのテスラ・モデルSのスタイリングが
どういうものかといえば、上の写真のように現代的でやや控え目、上品な3ボックスセダン風。
(本当はリヤハッチゲート付き)なめらかでバランス良くきわめてクリーンな印象です。
特にEVらしいということはありません。
このボディに上質なエンジンが乗ってたらそれはそれでいいかも、とも思えます。
こういうまっとうなのでいいんじゃないでしょうか、EVでも、形は。
ちなみにフォルクスワーゲンから出たばかりのゴルフのEVバージョン、e-Golf は見た目ほとんど
現行ゴルフ(Golf Ⅶ)のまま、前後のバンパーとか補助ライトとかがちょっとそれらしくオリジナル
デザインになっている程度です。同社としては現行ゴルフのデザインに自信を持っているということも
あるのでしょう。私もとてもいいと思っています。
VWブランドで変な方向にスタイリングオリエンテッドなものを出してもな…、という気もしますが、
それは別のお話。
まだ高価なEVをゴルフの名前と形のまま成功させられるのか、このプランに賛意を持ちながら成り行き
を見守りたいです。
色々書いてきましたが、いくらプロモーション用の架空の車といえど、EVらしく個性的な形…
などと考えるよりも、車としてまっとうに進化した魅力的な形を考えるのが筋なんじゃないかなと、
そういうふうに思うわけです。
EVらしい形?そんなの無いです。 ということを打合せでは角を丸めて…。
速さとパワーを誇るダイナミックな造形、オフロードな荒野を賭けるアクティブな造形、しかし、EV=環境に優しい、それを造形で表現、??ちょっと難しいですよね。
でも、人間、試行錯誤してゆくとなんか方向があるのかも、
日本のロボットなんかもこの先どうなるかわからんけど、
擬人化しながらなんか方向を探っているみたいだし。
車もバックトゥザフューチャーの様に言葉をしゃべれるようになると
型もかわってくるのかも知れませんね。
by まっさん (2015-09-11 23:19)
速さとハイパワーを誇るスーパーカーのダイナミックな造形、荒野のオフロードを踏破するアクティブな4WDの造形、EVの地球と環境に優しい先進の造形??、
これが難しそうですよね。でも、人間、なんか試行錯誤しているうちに方向が見えるかも。
日本のロボット開発なんかも擬人化の方向でなんか面白い方向に行きそうな気もするし、
車も、バックトーザフューチャーの映画じゃないけど、人間と応答できる、しゃべれるようになったりすると形ももっとペットのようにかわいらしくなるかもしれないですしね。
今後が楽しみです。
by まっさん (2015-09-11 23:46)
まっさんさん コメントありがとうございます。
なるほど、EVらしいというよりも、環境にやさしいとか先進性を感じる造形とかなら合点がいきますね。
実際にそれを人様が見て狙い通りに感じてもらえるかどうかは簡単なことではないと思いますが。
この先車が自動運転とかが出来るようになって、中身的にはロボットぽくなっていっても、車として
いい形だな、美しい造形だなと思えるように進化していってくれたらいいなと思います。
うちが仕事でよくうけるプロモーション用の架空の車のデザインの場合、近未来風のものと並んで、
今実際に売ってるようなのとか、それよりもほんのちょっとだけ進んだくらいのとか、そういうさじ加減の
ものも多いんですが、今風とか近未来風といっても人によって何をそう思っているか色々で…、
結局つまらないものになってしまうことも少なくなくて、あーぁ、こんなのになっちゃった。どうせ作るなら
形として美しいもの、愛せるようなものにすればいいのにな… などと思ってしまいます。
目的は車を目立たせることではないといったって、それが魅力的なのとそうでないのだったら、
デザイン自体もそうですし、出来上がった絵柄としても魅力的なほうがいいに決まっているんじゃ
ないのかな? といつも思います。
by ash_institute (2015-09-12 16:57)