考え方は同じだからこれでいい [Web、CG、スケッチ、デジタルモデリング、仕事]
何年か前、某自動車部品メーカーで打ち合わせの時に言われた言葉です。
ある新規開発品のアピールのために比較的簡単な情報のみを支給され、そこから3Dデータで
形状を作り、それを架空の車両の適切な位置に配置し、いつものように透視画像に仕立てる
という仕事だったのですが、支給された資料は機密の問題もあり、そこから全ての形状が
読み取れるようなものではありませんでした。そういうことはよくあることで、そんな場合は
こちらもその都度その種のメカニズムについて勉強して、開発者は恐らくこう考えたであろう…
という形状を想像して3Dデータを作り上げることになります。
その時の開発品はモーターと巧妙なバランサーが組み込まれたものだったと思います。
私が作ったデータ(画像)を見た広報担当者の方々はそこに組み込まれているバランサー:
エンジンでいうところのカウンターウェイトのようなものですが、その形が開発中のものと違う、
どうしよう…?みたいな感じで問題視して、技術部の開発担当の方(工学博士、部長クラスの
ポジションの方)に確認することになり、ややざわついたような雰囲気でした。
そうは言われても、こちらとしてはその部分の詳細情報をもらえていないので、そこの形状が違う
と言われてもどうしようもないわけです。そういうこともあるだろうなと思っていたので、もう
言われるがまま修正しよう…、そう思っていました。
で、開発担当の方からの返事は「考え方は同じだからこれでいい。(形が違っても)問題無い。」
とのことでした。 広報担当の方々はちょっと釈然としないような感じでしたが、それは彼らに
してみれば、後々直接は関係の無い色々な部署や外部からの突っ込み(何で現物とこの絵は
違うんだ?みたいな)への対処を考えなければならない立場なので、わからないでもないです。
なるべく変なリスクは抱えたくないでしょうから。
ただ、開発者からしてみれば原理的な破綻が無ければ新技術のアピールとしては問題無いし、
あとのことは知らん、という感覚だったのかもしれません。もしかしたら、広報用の画像の形状
が現物と違っていることはコピー防止という面ではむしろ悪くない、そう考えたのかもしれません。
いずれにしても、「考え方は同じだからこれでいい。」と言い切ってもらえたのは、私としては
嬉しいことでした。開発の意図への理解が間違っていなかったということですから。
この自動車部品メーカーは、私が独立して3年ほどたった頃、商品ガイドブック(自社製品の
カタログが膨大なため、そのカタログ類の案内的なものが存在する)を10年ぶりくらいに刷新
したいとのことで、車関係で広範囲に技術的な破綻の無いリアリティの高い画像を作れる人は
いないか、ということで、人づてにまわりに回って私のところに話が来て、初めて仕事すること
になり、それ以来長い間お取引きさせていただいています。
その最初の仕事が2006年頃のことで、2007年にその刷新された商品ガイドブックが完成し、
その年の東京モーターショーで配布され、同時に製作された動画が大型モニターで流されました。
そして翌年、日本産業広告協会 第29回「2008日本BtoB広告賞」製品カタログ単品の部で銅賞を
受賞しました。
冒頭の打ち合わせはその後何年かして、何回目かの仕事の時ものです。
画像の車はその商品ガイドブックの中で使われる車として、特定の自動車メーカーのものなど
既存のものではないものを…、というリクエストに応じて、弊社のオリジナルモデルを改修して
使うことになる、その改修前のものです。
その改修の方向性が、「このままではちょっと未来的過ぎるので、もう少し普通の車っぽく…」
という、今ではちょっと考えにくいような内容で、今となってはそれも懐かしく思い出されます。
未来っぽさというのも人によって違うので、中々さじ加減が難しい…。
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