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漫画「東京ヒゴロ」がいい [Web、CG、スケッチ、デジタルモデリング、仕事]

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ビッグコミックオリジナル増刊号の“東京ヒゴロ”がいい。松本大洋氏の作品で、最初はそれほどとは思わなかったが何回か読んでいくうちどんどん引き込まれた。特に今号(3月12日号)の女性編集者、林の話は心を掴まれた。こういう作品をもっと見たいと思わされる。

主人公の後輩編集者であるこの女性編集者、林の仕事と自身の内面に真摯に向き合う姿勢がいいし、まじめさゆえ思い通りにいかないと眉間にしわが入る表情とか、葛藤を含めた心の声がとても共感できていい。あっさり目の細面にめがねという容姿も自分の潜在的な好みなんだろうなと思う。

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自分には編集者に相当する人はいないし、編集者のことを良くわかっているわけではないのだが、この作品を見ると、良い編集者とめぐり合って、守られて導かれて、時に互いを傷つけあうようなことも何度か繰り返して、それでも会心の作品ができたらどんなにいいことかと思う。

脚光を浴びにくい日が当たりにくい立場でも、いや当たろうが当たるまいが、自分の心の中のプライドにかけて会心の仕事をするために一生懸命働き続ける、編集者に限らずいろんな業種でこういう人達が東京には沢山いるんだろうな。もちろん東京以外にもだが。そういう人全てに幸あれと思う。

東京は自分にとっては、好調の時に行くと気分が高揚して何だか色々出来そうな気がして気持ちがいいのだが、そうでない時は(残念ながらこっちのほうが多い)場合によっては徹底的に落ち込ませてくれてすごく嫌な気持ちにさせられることがあって、どちらかというと好きではないのだが、

こういう作品を見ると、こんな女性編集者、林のような人が沢山集まって成り立っている、東京のそんな一面が感じられてちょっと温かい気持ちになって、何だか切なくなって、東京のことをそれほど好きではない(人と接するのがあまり得意ではない暗めな性格な)私でもいとおしく思えてくる。

自分には編集者に相当する人はいないと書いたが、近いとすれば広告代理店の営業や制作担当者か。代理店からの要求はしばしば無茶なものがあって…、例えば、お昼頃に電話があって当日中に3DCGの透視画、テクニカルイラストが欲しいとか、そんなの逆立ちしたって無理!みたいなことも時にある。

さすがにその納期では無理ですけど、明日の朝までなら何とか…と、他の仕事を止めて徹夜で作業して納品、なんていうことも実際に何度かやった。一番ひどかったのは夜19時過ぎに電話が来て、翌朝までにテクニカルイラストを数点欲しい
というもの。2002年だからもう20年近く前のことになる。

その超無茶な要求をしてきたのはリクルートの今は無きエンジニア向け求人情報誌「Tech Being」の制作を行なっていた広告代理店。20代と思しき若い女性担当者で、移動中のタクシーの中からの電話で、かなりあせっている様子が電話越しに感じられて、聞いているだけでかわいそうになった。

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彼女からはそれ以前に同じ「Tech Being」の特集記事用にとイラストを頼まれたことがあって、その時は比較的まともな納期をもらっての仕事だった。やり取りはかなり遅い時間にあることが普通で、こちらが心配になるほどではあったが、リクルートという会社の仕事はそういうものだった。

それがこうなるということは、それなりの事情があって、きっと板ばさみになって大変なのだろうなと思い、いつもの徹夜仕事で対応した。請け負う返事をした時と納品した時、彼女はとても感謝してくれた。後日その「Tech Being」当該号を送ってくれて、それは今も保管してあると思う。

無茶な要求をしてきた相手はあの時のリクルート担当の女性や、“東京ヒゴロ”の編集者、林のような人かもしれない。そういう頑張ってる人達に頼られて、その力になれるならそれは悪くないかな…。無茶なことを言われても、そう思えばなんとか心を閉ざさずにいられるような気がする。そうでありたい。

それに、無茶な要求とはいえ何らかの依頼をしてくるということは、少なくとも自分のことを有用に思ってくれていて、相応に価値があるものを生み出してくれると思っている数少ない人のひとりなのだ。その他のほとんどの人達よりもずっと自分に近い理解者ともいえる。そう思えば少しは心も落ち着く。






色々思うことはあったとしても、“理解者”を大切に…。



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